RICOH GXR + MOUNT A12 + Zeiss Planar 50mm F1.4 ZS
「タクシーなんて、そう乗らないよ」と言われたらそれまでですが。
去年までは仕事で毎日のようにタクシーを利用しており、一人で乗った時などはドライバーの方とよくお喋りするのが習慣化しておりました。
今年に入りパタッと乗らなくなったのですが、今日はどうしても撮影現場まで時間が無く、久しぶりにタクシーを利用しました。
オ「どうも、○○って言う屋形船の乗船場わかります?」
タ「さぁなぁー、この辺は星の数ほどあっからわかんねーなぁ、住所言ってよ。」
オ「へぇー、そうなんですねぇ、えっとですね~」
てな感じで、お互いに”この人話しやすいな”と感じながら会話は続きます。
タ「イイねぇ、これから飲んで食って遊ぶんだろぉ?」
オ「ハハハ、とんでもない。僕はカメラマンで今から撮影に行くんですよ」
タ「ほー、そうかい。飲み食いできないの?」
オ「ええ、その予定はないですね(笑)出航までに舟を降りてくれって言われてます」
タ「ガハハハハ、そりゃ辛いねぇ(笑)カメラマンも大変だなぁ」
オ「まぁ好きでやってますから、運転手さんもこの仕事は長いんですか?」
タ「もう30年以上やってるよ、あんた生まれてる?」
オ「ん~、ちょうど生まれた頃です(笑)」
タ「だろぉ~?ヘッヘッヘ」
何の”ヘッヘッヘ”かは聞きませんでしたが、随分楽しそうにバブル時期の事なんかを話してくれたりしました。
まぁ、僕もズルいと言いますか、その話を振ったのは僕でして、だいたいこの世代の方に”バブル時期”の事を聞くと、それはもうキラキラした表情で思い出を話してくれるのです。
どうせ話すなら楽しい時間であって欲しいという、僕なりのホスピタリティのつもりだったりします。
タ「にしてもさぁ、このご時世にカメラマンやってるなんて大変だろ?」
オ「と言うと?」
タ「いやさぁ、スマホで今は簡単に綺麗な写真が撮れちゃうじゃんかよ」
オ「確かにそうですねー。フィルムの時代と比べると”専門性”ってのは薄れてるんでしょうねぇ」
タ「だなぁ。けどアンタには仕事が有るって事はさ、上手いんだろ?写真撮るの」
オ「まぁ、そう思ってもらえるように毎日必死ですよ(笑)」
タ「俺もさぁ、客を選ぶのが上手いんだよ(笑)」
運転じゃないのかい、とは突っ込まずに話は続きます。
タ「道に立ってる姿を見るだけでさ、だいたいわかるんだよ、やばい奴かどうかってさ」
オ「なるほど。テレビとかでしか知りませんけど、大変な体験されている方が多いですもんね」
タ「まぁよ、カメラマンだって”ピン”と来たポイントでシャッター切るだろ?それと同じよぉ。長年コレやってっとわかるようになんのさ」
オ「すごいですねー、分かり易い例えですね」
タ「頭の後ろに透明なガードが付いていようが、車内カメラを搭載していようが、乗せちまったらそれまでよぉ、自分の身は自分で守らねぇとさ」
オ「そっかぁ、じゃあ僕は運転手さんのお眼鏡にかなったって事で光栄です(笑)」
タ「ヘッヘッヘ」
こうして僅か10分ほどでしたが、無事時間内に目的地へ到着し、この運転手さんとはお別れしました。
多くの場合、僕はもうこの運転手さんと会うことはまずありません。
ですから、この狭い車内空間で二人が作った極小さな物語というのはある意味貴重であります。
互いに時間が経てば顔も名前も、話した内容すらも忘れてしまうかもしれません。
ですが、こんな些細な事の積み重ねが”感受性”やら”思想”やらに影響を与えるのだとすれば、ムスッと黙る時間にしてしまうのは、なんだか勿体ない行動だな、と感じるのです。
この”タクシー”という唯一無二とも言える特殊な時間を、今後少しだけ楽しんでみるのはいかがですか?
乗車時間:10分
金額:810円
す、すーこし、やっぱ高いですよね(汗)
オーゼキコーキ
【本日の一枚】
X-T1 + XF 16-55mm F2.8