Leica M6 + Summaron 35mm F3.5 + Lomography Lady Grey B&W 400
「今日は人を撮るぞ」と意気込む日が稀にあります。
本当は常日頃から、街で出会った素敵な人に声を掛けて撮らせて頂きたいと思っていますが、僕は自他ともに認める大の人見知りです。
かなり気合を入れなければ、なかなか見ず知らずの人に話しかける事ができません。
これまでも「あっ」と思った方に声を掛けられず、数え切れないほどの後悔をしてきました。
その度に自身のテーマに対する決意の弱さや意気地の無さを責めては落ち込んでいたりします。
もちろん、こうしてブログを書いている今日だって既に2回も悔しい思いをしていますからね(汗)
Leica M6 + Summaron 35mm F3.5 + Lomography Lady Grey B&W 400
最も厄介に感じる点は、仕事でのスナップとプライベートのそれとでは、妙なスイッチが切り替わってしまうことです。
なんと言いますか、自分がそこにないというか、仕事モードだから臆せずにイケるというか(汗)
本記事の写真も含め、このブログに載せている多くはプライベートで撮ったものですが、実はかなり緊張しながら、勇気をふり絞って撮っていたりするんですよ(笑)
とても尊敬している写真家の一人である『ハービー山口』さんの写真を観ては、「なぜこうも人の中へ入れるのだろう」と、自分の至らぬ部分を露にされる想いでいっぱいになります。
とはいえ、こうして自分でフィルムに収めた方々の写真を眺めると「もっと撮りたいし、撮るべきだ」と思うわけです。
冒頭のおばあちゃんは、歩くのが困難で辛そうにしていたので写真を撮らせて頂く気も無く「大丈夫ですか?」と声を掛けたのがきっかけでした。
すると、無くした物があり近くの交番まで行きたいというので、荷物を持ってあげながら、細かな段差など手を取り一緒に向かったんです。
その長いようで短い時間に色々な話を聞きました。
既に他界されているご主人は、生前にカメラマンだったことや、僕がその日にぶら下げていたカメラにとても見覚えがあることなど、それは懐かしそうに話してくれました。
交番の前に着いた頃には、自販機に指をさし「好きな飲み物を一つ選んで。こんなことしかできないけど、何かお礼がしたいのよ」と言ってくれたんです。
その気持ちが嬉しかったですねぇ。
こういう気持ちは断るほうが失礼と思い、有り難く缶コーヒーを一本買って頂きました。
僕としてもすごく心温まる時間でしたから、是非写真を撮らせてほしいと伝え、4枚ほどシャッターを切り、その場を後にしました。
その缶コーヒーを飲みながら歩いていると、陽気なハーモニカの音色が耳に届き、そちらへ向かってみたんです。
するとそこには、とても楽しそうに演奏するおじいさんが二人。
少しの間そこで立ち止まり聞いていると、なんだか周りの道行く人たちが少し冷ややかな目で見ていることに気が付きました。
僕には、どうしてもそれらの目線がこの愉快な演奏を孤独なものに変えている気がしてならず、とても寂しく思えたんですよね。
それが理由の全てと言いませんが、写真人としてはこの二人組を「素敵ですよ」という意思表示として撮りたいと思ったわけです。
一曲終わったタイミングで声を掛けると「じゃあもう一曲やろうか」と、再び演奏を始めてくれました。
カメラを構えながら一緒にいる僕を、きっと周りの道行く人は同じように変わった”モノ”として見ていたかもしれません。
けどこの時の僕は「望むところだ!」って感じですよね(笑)
演奏を終えた二人と少し話しましたが、ちゃんとコンビとして活動しているとのことで名刺を頂きました。
これからも是非楽しく曲を奏で続けてほしい事を伝えて別れたわけですが、もっとこういう風景を楽しめる人が多くなればいいのになぁ、と、若僧ながらに思いつつ、またスナップを続けました。
過去の記事をご覧の方はご存知とは思いますが、僕はギターをカメラに持ち替えた人間です。
こうしてカメラを胸にさげて歩けば、ただ通り過ぎるだけではわからなかった多くの時間に出会えるよ。という事を、微力ながら音ではなく写真で伝えていきたかったりもするわけで。
これからも勇気を出しては、カメラ片手に人と話して行きたいと思っております。
皆さんも温かい”眼”を胸に、撮りたいと思えるステキな時間に出会えますように。
オーゼキコーキ
【本日の一枚】
RICOH GXR + S10