200years:

-ozekikoki-

フィルムもワインの如く

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現像していないフィルムが貯まりすぎて、古いものだと3年は経過していたり・・・。

実はパトローネに書いた日付と機種名だけを確認しながら、順不同でチマチマと現像に出すのが好きだったりするのです。

何度も一気に手を付けようかと考えましたが、その度に『まだまだ』と、ワインを寝かせているかの如く放置するのが自分流(笑)

 

もちろん「劣化しちゃいますよ!」というご意見は十分に理解しています。

まぁ、ある種の楽しみと化しているので、すぐに上げる必要があるもの以外は手を出しません。

 

事の始まりは5年ほど前に実家へ帰省した際、父の車のダッシュボードに放り込まれていた一台のコンパクトフィルムカメラとの出会いにあります。

父に聞いても最後に使ったのはいつなのか全く覚えていないとの事で、幾年ぶりに対面したそれを確認してみると、案の定フィルムが入ったままではないですか。

 

この時までの父がどれほどカメラや写真に関心が無かったかはまた別の機会にお話しするとして、問題のフィルムを近所のカメラ屋へ現像に出してみたわけです。

 

一体何が写っているのか、母も含めて誰も見当がつきません。

 

店員さんに「もう何年前のものかわからないんですが、いけますか?」と尋ねてみましたが、「ん~、とりあえずベストを尽くします・・・」と自信のない返答。

結局待つ事2時間弱。

受け取りに行ってみると「色は真っ青ですけど、まぁ見れますよ(笑)」と嬉しい事を言うではないですか。

早速家へ戻り、家族が見守る中開封してみると、そこにはまだ小学生くらいの僕が、ニコニコ笑顔で写っていました。

見た限りでは、家で父と二人だけで料理をして、それなりに上手く出来たのか嬉しそうに2人で肩組みピースをしています(笑)

ということは、もう10年以上前ということかな?

 

確かにプリントの色は真っ青で、劣化の極みと言えるほどですが、夏に40度以上、冬は0度を下回ることもある車のダッシュボードの中で、それだけの歳月を経たにもかかわらず写っているとは誰も予想していませんでした(笑)

 

この時の驚きと感動は、それまでに無い不思議な感覚でしたから、今でもそれらの写真をよく覚えています。

頭の片隅にある記憶と喜びとが脳内で画像処理エンジンの役割を果たし、これを書いている今思い浮かべてみると、実際のプリントよりも鮮明なカットとして変換されていますね(笑)

 

もう本当に、写真って良いですよねぇ。

 

感動した瞬間や遺したい思い出に対してシャッターを切ることが、如何に大切で尊い事なのかを改めて教わった貴重な体験でした。

 

それからと言うもの、フィルムで撮ることが格段に増えた気がします。

 

ただ、さすがに同じ感動をもう一度味わおうと思っても、そう簡単に10年待てませんからね(笑)

今の僕がフィルムを寝かせている感覚はこれとは少し異なります。

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日頃デジタルでスナップしていると「観るまい」と思ってもそれは撮影中にチンピングをしないだけで、データ移動やなんやらで結局は数日中には目にしてしまいます。

それはそれでデジタルの最大のメリットですから良いのですが、時折貯まっているパトローネに自分で書き込んだ日付だけを見て選んだ一本を、ポッと現像すると、もう一人の自分が同じ時間軸の中でスナップしてくれていたような錯覚を起こすことがあるんです。

ん~、何とも伝わりにくいですよね(汗)

つまり分身の術を使って別の時空間で撮影したデータを一度に手に出来ると言いますか・・・。

 

まぁ、なんとなく伝わっていれば嬉しいのですけど(笑)

 

そうやって手にするカットは、撮影時の妙な”手応え”のようなものが頭から抜けていますから、「良いカットが撮れているぞ!」というバイアスフィルターが無いぶん冷静に観ることが出来ます。

それが良い結果となるか否かは人それぞれですから、敢えて勧めるつもりはないのですが、僕にはこういう変な趣向がありますよ、というお話であります。

 

皆さんも家の押入れなどに現像を忘れたフィルムはございませんか?

もし見つかればきっと楽しい感覚に出会えると思います。

 

オーゼキコーキ

 

【本日の一枚】

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